そんなに意識してはなかったのに、気がついてみるとけっこう聴きつづけているアーチストがいます。バッティスティやバッティアートがそうでしたし、このアリーチェもそうです。
デビュー当時は CARLA BISSI の名前でシングル盤を出していました。このころの音源が、最近CD化されて発売されたのは幸運でした。その後、イ・プー人脈のバックアップでCGDからアルバムを2枚出しています。このときのファーストアルバムは、後に日本のみCD化されました。セカンドアルバムは、多分CD化されていないのではないでしょうか(後に紙ジャケ出ました!)。私が持っているのはドイツ盤ですが、残念ながらイタリア盤と違って歌詞がついていません。編集も入っているらしいです。これら2枚とシングルからのベストは比較的入手しやすいと思います(もう一種類あるようですが)。なお、ファーストアルバムのみ ALICE VISCONTI 名義になっています。
EMIに移籍後は、最初バッティアート人脈がバックアップしたので、プログレファンにも広く好まれています。私も、低くて張りも艶もある歌声が気に入って、見かけたときに懐具合が許せば買って聴いていました。なお世界歌謡祭来日記念盤「草枕」というのがあって、これも日本限定発売で歌謡祭ノミネート曲が入っています。しかし歌謡祭そのものは昭和天皇崩御のため中止になったので、幻の参加曲となってしまいました。
初期作品を推す人、バッティアート絡みに尽きるという人など、好みはいろいろですが、どれもやはりアリーチェ、その時々の持ち味を味わい尽くすのが良いでしょう。私はEMI時代の終わりから現在にかけての、ややアンビエントがかった音に深みのある作品がもっとも気に入っています。
|
- (FIORELLA &) CARLA BISSI
- I PRIMI PASSI 98(69-73)/CD/ITA/ITA ON SALE OSM035
*フィオレッラ・マンノイアとアリーチェ(当時はカルラ・ビッシ)の初期シングル盤を収録した、ありがたい企画盤。カルラ・ビッシの歌声はのびやかで明るく、実にうまい。このあたりからセカンドアルバムまでが好きだという人が少なくないのも頷ける。それはそうとフィオレッラの鼻にかかってちょっと投げやりな感じの歌もなかなか、悪くないですね。(P.S. このCDを譲ってくださったEさんありがとう。)
- ALICE [VISCONTI]
- LA MIA POCA GRANDE ETA 75(89)/CD/ITA/JPN KING 292E2065, (05)/CD/ITA/JPN ARCANGELO ARC7107
*ALICE VISCONTI 名義のこのファーストアルバム、日本のみ89年にCDが発売された。歌詞はすべて D'ORAZIO 作。ドラマティックで美しく、歌い方も伸びやかで素直、バッティアートがらみになるEMI時代よりもこちらが好きという人が多いのも分かる。 P. S.*とにかくCD化されたのが日本だけなので、もともとイタリア人からも問い合わせをいただくことの多いアルバムだった。これが紙ジャケで出てしまうというのだから・・・。今回の紙ジャケシリーズではやはり一番人気と思われる。音質がずいぶんよいので、それだけでも買い替えの価値はある。
- COSA RESTA... UN FIORE 78/LP/ITA/DEU ARIOLA 203-647-270, (06)/CD/ITA/JPN ARCANGELO ARC-7141
*CGD時代の2枚目。甘くやさしいメロディラインにのせた素直な歌が多いが、独特のクセのある歌い方の片鱗がすでに姿を現しはじめている。 P.S.*出てほしいといいながらもまず出るまいとたかをくくっていたセカンドアルバム、まさかの紙ジャケ再発である。イントロとリプライズのインストが前後に入るのが、ドイツ盤LPとの違いか(きちんと聞き比べたわけではないのだが)。"IO VOGLIO VIVERE" はいつ聴いてもいいねえ。全体にエコーはかけすぎだと思うが、曲はよいしアリーチェの声もまだ凄みを効かせない分伸びやかで、聞き心地はすばらしく快い。
- ALICE 75,78/CD/ITA/ITA CGD PARADISO 9031 70108-2
*CGD時代の作品のベストアルバム。2枚のLPからとシングル盤の "Piccola Anima" 収録。
- CAPO NORD 80/CD/ITA/ITA EMI 7487042
*EMI移籍後第一作。音使いがかなりプログレッシブで、バッティアートの影響が強く感じられる。ラディウスらの参加でバック陣も充実している。
- ALICE 81/CD/ITA/ITA EMI 7-48703-2
*アリーチェの作詞作曲が6曲、バッティアートとピオによる曲が2曲で、彼らが全体のアレンジを担当している。ラディウスがギター、ワルター・カッローニがドラムスなど、バック陣も充実。アリーチェの力強い声の個性をさまざまな形で表現していて、特に一曲目の "PER ELISA" などは凄みを感じる。とにかく彼女のアルトヴォイスが好きな私などは、どっぷりハマってしまう傑作。
- AZIMUT 82/CD/ITA/ITA EMI 7467942
*アリーチェのオリジナルの他、バッティアートの曲が1曲、エウジェニオ・フィナルディの曲が1曲。アリーチェの曲もそれぞれ楽しめるが、特にバッティアートの "CHAN-SON EGOCENTRIQUE" は面白い曲。
- FALSI ALLARMI 83/CD/ITA/CHE EMI CDP 7487022
*作曲に MATTEO FASOLINO との共作が5曲、他は作詞作曲に ALICE VISCONTI 名。素直で明るい曲や歌い方がさわやかで、このころの一連の作品の中では一番リラックスさせられるアルバムかもしれない。
- GIOIELLI RUBATI 85/CD/ITA/ITA EMI 7467952
*「バッティアートを歌う」という副題のついたこのアルバム、バッティアートの曲をカッチャパッリャのアレンジで歌う。といっても別に難解なわけではなく、明るくてクラシカルな雰囲気。傑作といわれるが、ちょっと歌い方が平板な気もする。
- PARK HOTEL 86 CD/ITA/ITA EMI CDP7466392
*バックが Jerry Marotta(ds), Tony Levin(b), Phil Manzanera(g), Michele Fedrigotti(k) というメンバーで、ちょっとすごいが、曲の作りはアリーチェはじめいつものメンバーだから、それほど毛色が違うわけではない。だからバックがお目当てで買うほどのことはないと思う。あくまでアリーチェのアルバムとして、そつのない出来の作品だが、アリーチェの歌唱力にちょっと曲が負けている気もする。
- ELISIR 87/CD/ITA/ITA EMI 077774870122
*旧作のリアレンジ、リレコーディングに、カヴァー曲、新曲も入る構成で、最初はその趣旨が疑問に思えたのだが、聴いてみるとコンセプトがつかめる。フール・オン・ザ・ヒルを聴けば分かるが、後の抱擁感のある音作りの萌芽とも言える作品集として、ベスト盤ではなくれっきとした新作アルバムとして成立している。それにしても、これを聴くと、まがい物のようなジャケットで出された、日本編集の「草枕」の統一性のなさが、よけいにふがいなく思えてしかたない。ぜんぜん分かってない人が、テキトー?に寄せ集めただけだと、一曲一曲は良いのに、アルバムとしてはめちゃくちゃになってしまう。
- KUSAMAKURA 88/CD/ITA/JPN TOSHIBA EMI CP32-5680
*これは歌謡祭の来日記念盤として編集されたものらしい。しかしアルバムとしてのコンセプトが曖昧で、選曲・構成には大いに疑問が残るが・・・。ジャケットには "Elisir" の写真が使われているが、中身は "Park Hotel" からの曲が過半で、さらに歌謡祭のエントリー曲 "LE SCOGLIERE DI DOVER" が加わっている(これは超名曲!)。"Park Hotel" の曲はややメロディの印象が薄いし、"Elisir" の選曲で特に不都合があったとは思われないし、「不思議の国のアリーチェ〜草枕」という日本語タイトルのセンスも理解しがたいものがある。どうせ出すなら純粋に "Elisir" プラスボーナスの形にして欲しかったと思う。結果的にはちょっとした珍盤?になっているが。
- MELODIE PASSAGERE 88/CD/ITA/ITA EMI 7917112
*サティ、フォーレ、ラヴェルの小品を、ピアノの伴奏のみをバックに、フランス語で歌う(ピアノだけの曲やヘブライ語の曲もあるが)。どちらかというと力強さのイメージが強かったのに、この作品ではあまりの美しさに息を呑みます。アリーチェの実力を再評価させるという意味で、重要なアルバムだと思います。絶品。
- IL SOLE NELLA PIOGGIA 89/CD/ITA/ITA EMI 7925202
*今回のバックはジャンセン&バルビエリ、ジョン・ハッセル、ピーター・ハミルなど、「超」個性派揃い。深みのある幻想的な雰囲気が、アリーチェのアルトの声質をよく活かしていると思う。これは日本盤もでたらしい。
- MEZZOGIORNO SULLE ALPI 92/CD/ITA/ITA EMI 0747989442
*ベスト物を除けばEMIに残した最後のアルバムになる。美しい。ひたすら、美しい。パッド系の音がアンビエントな雰囲気を醸し出していても、アリーチェの声の確かな存在感は揺るぎなく、ヴォーカルものとしての魅力がしっかりと伝わってくる傑作。音もコンセプトも、たとえばシンフォ系プログレファンなどにも十分アッピールするものがあると思うがどうだろう。
- CHARADE 95/CD/ITA/DEU WEA 0630104172
*WEA移籍第一作。メッシーナとピスケトラのサポートは相変わらずだから、そんなに毛色が変わったわけではないが、トランペットやギターの入り方、エスニックな味付けなど聴き所は多く、曲の深い味わいや歌のあでやかさでもピカ一のできではないか。アートワークもなかなか。なおメッシーナとピスケトラが DEVOGUE というアンビエントのユニットをスタートしたので、このアルバムにも DEVOGUE バージョンなるものがあったりする。
- EXIT 98/CD/ITA/ITA WEA 3984-24879-2
*バラエティ豊かな曲がアリーチェの円熟味を引き出している。アンビエント色はやや後退しているとは言うものの、バック陣の主だったメンバーは相変わらずだから、エレクトロニックなポップスに乗って紡ぎ出される幻想的な深みが、やはり魅力である。
- GOD IS MY DJ 99/CD/ITA/DEU WARNER FONIT 8573810212
*ギャビン・ブライアーズ、ジェーン・シバリー、フローリアン・フリッケ、デビッド・クロスビー、バッティアート、フォーレ、中世の歌・・・。一見バラバラな取り合わせは、アリーチェとメッシーナらによる個性的な聖歌集になっているようだ。"MELODIE PASSAGERE" 以来の企画モノということになろうか、これもまたあまりにも美しい作品に仕上がっていて、言葉がない。
- PERSONAL JUKE BOX 00/CD/ITA/ITA WEA 8573820062
*全16曲のベストモノだが、うち未発表曲3曲、新録音7曲、リミックス1曲だから、十分値打ちはある。新録音はアレンジはエレクトロニックだが、声は生のニュアンスが生きた録音になっているところが興味深い。円熟の表現力が堪能できる。ベストモノと言うと入門用の場合が多いが、本作はむしろアリーチェを聴きつづけてきたものにとってのこの上ない贈り物と言えよう。
- IL GIORNO DELL'INDIPENDENZA 00/CDS/ITA/ITA WEA 8573820092
*いまさらですがPJBからのシングル盤。カップリングは "EXIT" からの "I AM A TAXI" のリミックス、DEVOGUE との共演で "MIDNIGHT BELLS"。
- VIAGGIO IN ITALIA 03/CD/ITA/EU EDEL NUN 0150432
*アリーチェの新譜は "GOD IS MY DJ" 以来のカバー集で、選曲はあいかわらず意表をつくもの。おなじみのバッティアートから、クリムゾンやシドバレットまである。たまたま前後して聴いた EQUIVOCI もとりあげているパネッラ&バッティスティ "COSA SUCCEDERA ALLA RAGAZZA" の聞き比べも(でも EQUIVOCI のはすごく短い(^^;)。詳しくは曲目をご覧ください。音作りは、バック陣が相変わらずなので、やはりしっとりゆったりした雰囲気で心地よいことこの上ない。すべての曲がアリーチェの曲になってしまっている。
- COME UN SIGILLO 03/CDS/ITA/EU NUN 0153446
*シングル盤だが、2,3曲目はアルバム未収録のスタジオライブ。曲の雰囲気はアルバムと共通するが、さらにシンプルな伴奏で、歌の素直さが引き立つ。
- LUNGO LA STRADA LIVE 09/CD/ITA/EU ARECIBO 0196245
*なんと6年ぶり? 久しぶりのアリーチェ、堂々のライブアルバムである。まったく衰えを感じない、あの厚みと艶のある低音が、スティーブ・ジャンセンらの控えめなバッキングに引き立つ。やはりバッティアートの "La cura", "Nomadi", "Prospettiva Nevski" を聞くと、ワタシはバッティアート以外で彼の歌を歌って欲しいヒトとして彼女はダントツ一位だなとつくづく思う。
- SAMSARA 12/CD/ITA/EU ARECIBO 0196263
*2009年のライブを除けば、スタジオ録音の新譜は2003年以来とするとなんと9年ぶりの新作ということになる。美しいデザインの3つ折り紙ジャケットに、共通のデザインの歌詞シートが入っている。今回もジャンセン+ピスケトラが録音や打ち込みを担当しているほか、メッシーナやタフーリといった音作りの要も9年前と同じ。長らく共作してきた MINO DE MARTINO は今回共作のみならず演奏も、M5では声も聞かせていて、かなり活躍している。おそらくはお互いを知りつくしたメンバーによる共同作業であろうから、完成度の高さはいうまでもなく、彼女の声をむしろかわいらしく聞かせるような、柔らかなアンビエンスを特に感じた。おなじみバッティアートや、ルイ・フェロのカバーも。
ページの先頭へ
|
関連盤 |
ALBERTO RADIUS,
CLAUDIO ROCCHI,
FRANCO BATTIATO,
DEVOGUE,
ROBERTO CACCIAPAGLIA
|
copyright 1996-2012 rim-mei |
|