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最近の更新(12年10月〜15年6月) |
『迷子の警察音楽隊』('07 イスラエル) 音楽よりも人と人とをつなげるもの |
エジプトの小さな警察音楽隊が、イスラエルのアラブ文化センターで演奏するためにやってきたが、迎えが来ないままに自力で行き着こうと乗ったバスが方角違い、砂漠地帯の小さな町にやってきてしまい、一晩を過ごすという内容である。もちろん、アラブとユダヤだから、描かれている時期は比較的関係がよかった時期ということで国際的な緊張感は緩んでいたということだが、ちょくちょく小さな摩擦は起こる。そもそも大歓迎されるような客でもない。イスラエルの田舎町というものがどういうものかよく分からないのだが、やはり空気はよどんでいて若者は退屈していて、というのはどこも共通しているのかもしれない。音楽隊も真面目な隊長と若い団員との間には溝があって、音楽隊の将来にも不安が漂っている。団長は団員には威厳を持って接したいが、不安や個人的な寂しさもあって、彼らの寝場所を世話する食堂の女主人とのやり取りも、ぎくしゃくしながらも深まりそうになりながら、若くてハンサムな団員もいて、たった一晩でも人間関係は絡み合う。異文化の交流なり音楽なりが何かを生み出すというほどでもなく、やがて夜は明けて、音楽隊は旅立っていくのである。乾いて埃っぽい暑さと、少しかさついた人間関係が、まるで自分自身のもどかしい一晩の記憶のようにひっそりと焼きつくような、そういう意味で心に妙に残る作品だった。 |
『100,000年後の安全』('09 デンマーク・フィンランド・スウェーデン・イタリア) もはや牧歌的にさえ見える沈黙の地下道 |
高レベル放射性廃棄物の最終処分場として、現時点で全世界で唯一、使用が決まり建設が進んでいるのが、フィンランドのオルキオルトにある通称オンカロ(洞窟、空洞の意)である。原子力発電事業者2社が設立したポシヴァ社が開発し、2020年の創業を目指して建設中である。小泉元首相がこの地を見学し、原発ゼロを唱えたので、日本でも広く知られるようになった。フィンランドは極めて古い地層の上にあり、有感地震が年に一回あるかないかという安定した地盤が、まず条件としてあった。これに加えて、チェルノブイリ事故の教訓から、原子力発電に関する徹底した情報公開が進められ、国民の理解と判断が進んでいる。それでも、10万年後の人間に高レベル放射性廃棄物の危険を知られることができるのかという、高い問題意識のもとに、このドキュメンタリーフィルムは作られている。日本は不安定な地震国で、その危険性は福島第一の事故で白日のもとに曝され、再処理や高速増殖炉という、原発を持つ国々の多くが見限った核燃料サイクルにこだわり、結局のところ多くの使用済み核燃料が保管され、海外で再処理したプルトニウムを多量に抱えることになっている。正直なところ、この静謐で無機質でそれゆえに息詰まるような映像は、福島第一原発事故後のリアルを見た後では、そしてそのほとぼりも冷めないうちに原発ベース電源を宣言し再起動に邁進する政財界の非人間性の前にあっては、あまりにも平穏無事な景色に思えてしまうほどだ。それは見る側がもう正常でないということだ。 |
『モンサントの不自然な食べもの』('08 フランス・カナダ・ドイツ) 食糧支配はすでにネクストステージへ |
モンサント。この社名は、環境問題、食糧問題に少しでも関心のある者であれば、だれでも知っている。人工甘味料からスタートした化学会社が、かつてPCBを普及させて膨大な利益と、深刻な環境汚染を引き起こし、枯葉剤でまたその利益と汚染を繰り返し・・・そしてラウンドアップ除草剤とラウンドアップ耐性の遺伝子組み換え作物のセットで、世界の食糧支配を、かつてない規模で進めてきた。私企業とはいえモンサント社が政治と深くつながっていることもまた明らかである。 |
『THE WAVE ウェイヴ』('08 ドイツ) 独裁の毒が回るのには一週間もかからない |
今年の授業は感情心理学に関する内容を増やしたこともあって、何か新しい教材を入れようと考えているうちに思いついたのが、モートン・ルーの『ザ・ウェーブ』(新樹社)。だいぶ昔、授業で使っていたのを思い出して、本棚から引っ張り出してきた。今も売られているのかアマゾンで検索してみたら、コミック風の表紙になっただけでなく英語テキスト版になっている?!それはそれとして、これはABCによってテレビドラマになっていたはずなので、それを入手できないかと考えて当時調べてみたときは、手掛かりがなく諦めていた。今回、改めて調べてみてわかったのは、なんとドイツで映画化されていたということだった。それがこのDVDである。2008年のドイツ国内映画興行成績第一位、サンダンス出品というから、知らなかった私が迂闊であった。早速、取寄せてみた。 |
『寿司くん プレミアムDVD』('14 日本) ノーコメント・・・ |
まさか出てしまうとは・・・作者の大学の人が「予算500円ぐらいでドラえもんを作った感じ」と評したという(で、作者はそれに「間違いないと思いました」という)、ネタはマグロ赤身らしき「お寿司の妖精」が主人公らしき短編アニメ集。大学の課題でFLASH ムービー作ったのがきっかけで、シリーズ化?したようだ。私がこれを知ったのは、キュウソネコカミの「サブカル女子」が好きで(カラオケでもよく歌うんだけど、DAMにはあるのにJOYSOUNDはキュウソの曲少なめではいってない)、同じタイトルの回があるのをツイッターで知って、見て、なんだかはまった。ただこれ、かなり安くてゆるくて黒い。実写人形劇とかも、もうしょーもない。でも、3本入っている監督作品のMVはどれも良い。寿司くんアニメだけなら(他の収録作品の多くも)ユーチューブで見られるので、いくら800円だからと言ってなぜDVDを買ってしまったのかは・・・自分でもわからない。缶バッチも買っちゃいましたし。あと、クソ長いミニチュアダックスTシャツも欲しいので困っている。なお「サブカル女子」はセイヤは「ブスではないけど可愛くない」と歌っているが「寿司くん」のはるみちゃんは見た目はカワイイですね。中身はかなり・・・ですけど。さて、なんとシーズン2も始まってしまったようです。どうしたもんでしょうかね。 |
『彼の背中の小さな翼』('13 日本) 久しぶりに演劇観ました |
ずいぶん久しぶりに、演劇を見に行った。サンシャイン劇場35周年記念講演・劇団キャラメルボックス2013アコースティックシアターという、真柴あずきが脚本・演出、キャラメルボックスからは坂口理恵と岡田達也、外部から上鶴徹、大家仁志、清水由紀を迎えての5人の芝居。同所で上演中の本公演『ナミヤ雑貨店の軌跡』の合間を縫って組まれるという変則的なスケジュールで(素人からするとずいぶん大胆なコトに思えるが)、客の入りやすい曜日や時間ではなく、私が行ったのも月曜日の夜の部だったが、圧倒的に若い女性、制服姿の女子高校生が多く、ほぼ満席だった。さすがに昼は入りの悪い回もあったらしいが。家族を捨てて出ていった父親の訃報が入り、遺品整理に出かけるイラストレーターの娘とその大学生の姪。父親は売れない画家のままだったが、共同生活をしていた青年がいた。その謎の青年には優れた絵の才能があったが、なぜか描きたがらない。そこへ青年の兄が現れて・・・というようなストーリー。私としては家族の愛憎もさることながら、やはり才能がないけれどもそれをしつづけるということの意味を、いろいろな点で自分自身が求めているので、相当考えさせられながら観た。生の楽しみの一つ、前説やカーテンコールも面白かった。清水由紀は『渡る世間は鬼ばかり』でえなりかずきの妻役で出ているそうで(このドラマが嫌いな私としては今やえなりかずきが結婚している役をやっているというのが驚きであったが)、この後急いで帰って見て下さいといって面白かった(他の役者があと17分しかないよ、と言ったら「録画予約してるよ!」という声が会場から飛んだり)。久しぶりに見た演劇だったので、期待以上に楽しめてよかった。 |
『猟奇的な彼女』('01 韓国) チョン・ジヒョン結婚しちゃったんだ・・・ |
見たらはまってしまった。チョン・ジヒョンがすごくかわいいので、どうにもなりませんね。実際は背の高いモデルさんなわけだけど、こんな表情でわがまま言われたらもう絶対かわいくて好きになるでしょう。韓国の若者文化情報もちらほらと知られるようになっているだけに、脱走兵の人質になるとか、ピアノ演奏の最中に一本の花を届けるとか、高校の制服を着て踊るとか(これは萌え・・・)、一つ一つのエピソードが面白い。知らなくて気付かないこともあるだろうが、ネットで調べるとこの映画のファンの皆さんがいろいろと情報を書き込んでいて、参考になる。もともとネット小説だったということから『電車男』を連想するが、内容にはネットは関係がない。本の方では、作者もこれは小説ですらないと断っているくらいで、その謙虚さが好ましく、映画も低予算で頑張ったらしいが、ファンタジー感を素朴さがうまくやわらげている。映画のエンディングは出来すぎでちょっと引くが、やはり小説の方はこういうハッピーエンドはくっついていないのだった。おっさんになってもこういうラブストーリーには弱いな。 |
『クラッシュ』('96 カナダ) 有名な方じゃないやつ |
バラードはSF作家のなかでは特に好きな一人ではあるが、『コンクリートの島』や『クラッシュ』は、それほど好きなほうの作品ではない。『コカイン・ナイト』や『楽園への疾走』までくると、狂気もつきぬけて好みなのだが、その手前のような感覚がもどかしいのである。バラードの小説の映画化では『太陽の帝国』をスピルバーグが映画化したというのも食指が伸びなかったが、『クラッシュ』はクローネンバーグが映画化したというので、いつかは見ようと思いながらそのままになっていた。今回見るきっかけになったのは、スヴェンセン『退屈の小さな哲学』(集英社新書)を読んでみたら、『アメリカン・サイコ』と『クラッシュ』がかなり詳しく取り上げられていたからで、まあそうなると見ておくべきかな、ということで見てみた。殺伐としてエロティックな描写は、到底楽しくも美しくもないけれど、バラードの世界を巧妙に映像化していると感じさせる。しかしここに描かれる世界は、原作の時代を経て、凶暴なテクノロジーと死=性の恍惚というよりは、やたらに賢くなった安全な車に示唆されるように、「生殺しのテクノロジー」の時代になっているのではないかと思う。ウェブにからめ捕られディスプレイの前で腐食していく人間に、ここで描かれるような生々しさはなく、むしろ災害とテロのリアリティこそ血なまぐさい。そういう一つの分岐点を代表する原作であり、映画かもしれない。 |
『恕の人 孔子伝』('11 中国) イ・ジョンヒョンが妖婦役 |
中国で作成されたテレビシリーズで、主役の孔子に台湾のウインストン・チャオ、愛弟子の顔回に日本のいしだ壱成、子貢役は香港の歌手兼俳優であるロー・ガーリョン、南子夫人に韓国の女優イ・ジョンヒョンなど、国際協力で制作されたが、反日感情のためか中国での放映が遅れたという話も耳にした。ストーリーは、アメリカ留学で教師が孔子を研究していたのに興味を持ち、数年ぶりに帰国して孔子研究に取り掛かった女子学生と、それをサポートする謎の男性、という現代パートを折々に挟み込みながら、『論語』と司馬遷を組み合わせながら構成された孔子の伝記パートが進行する。孔子の言葉は主に『論語』から取られているから思想的にはオーソドックスだが、その生涯や家族などのエピソードには、ていねいな創作が加えられ、ドラマ的に面白く仕上げられている。35回のドラマに10億円かけたということで、映像的にも重厚で、おそらくセットや小道具などもよく考証されたものなのだろう。配役もすばらしく、孔子はもちろん、孔子が後継者と見込んだが病弱で早世してしまう顔回、裕福な商家の出で自分も商才に長け、外交折衝に手腕を奮うことになる子貢、単純で力持ちだが心から孔子に敬服し、武官として活躍するが謀叛に立ち向かい壮絶な死を迎える子路の三人は、もうちょっとこれでイメージが固まってしまうくらい、適役にして名演である。孔子の生涯については、私にはやはり強い失意が感じられるのだが、ドラマもその思想の評価を高める現代のストーリーとはむしろ矛盾するほどに、孔子の晩年を辛く描いていて、共感を覚えた。孔子の語り口にそもそも閉口してしまう人にはどうしようもないドラマだろうが(つまり口を開けば名言を吐くわけだから、ともすれば鬱陶しいことわざおやじみたいな人なわけで)、現代パートを挟み込むことによってむしろある程度客観的に孔子の思想や生涯を眺められるように、うまく作られた作品と思う。 |
『テルマエ・ロマエ』('12 日本) 見ていて風呂に入っている気分にならないのはなぜか |
映画が話題になったから原作を読んだ私のような者には、そのきっかけを作ってくれたことには感謝しなければならないが、しかし原作を堪能した後で映画を(特に自宅で、DVDで)見て、どうにもがっかりしてしまって申し訳ない。確かに阿部寛はじめ濃い顔の男優を揃え、CG全開で古代ローマを再現、原作にはない役の上戸彩の胸元にときめくというので話題性十分、大スクリーンで見ればそれなりに楽しめただろう。しかし、まず予期した以上に「音」が邪魔になる。BGMがオペラ歌曲では古代ローマにどうにも咬み合わず、違和感が強すぎる。スペクタキュラーな画もやはりテレビではもの足らず、しかも現実の上戸彩が結婚してしまった。どうもこういったトホホ感が付きまとい、期待したほどには楽しめなかったというのが本音である。映画の続編は見ないだろう。原作の続きはすごく楽しみであるけれど。 |
『火星の倉庫』 ('08 日本) ほかの修学旅行生はどこにいたのかな |
仕事で久しぶりに新宿の紀伊国屋書店に行ったので、ビデオショップで扱っているヨーロッパ企画のDVDを物色。どれも見たいが、選んだのがこれ。とある埠頭の倉庫を、そこで働く若者たち、やくざ、そしてエネルギー問題を裏で動かしている秘密組織が、それぞれに利用している。本来重なり合わないはずのこの3つの集団が鉢合わせしてしまうことによって地球の危機を招来してしまう・・・。SF仕立てのコメディがやはり面白い。大小の火星人?の造形もちょうどよい。落ちがちょっとしんみりするのはいつもの脚本らしいが、もっと皮肉がきいているほうが好みではあるけどそうなると上田誠ではなくなってしまうね。コメンタリーやトークショー収録もお楽しみ。お芝居をDVDで見る野暮は承知の上で。 |
『好好! キョンシーガール〜東京電視台戦記〜 vol.1』 ('12 日本) バンバンがまたかわいい |
はまった・・・。川島海荷ちゃんは、テレビの『ブラディマンデイ』で見て「かわいいなあ・・・」と思って以来、好きです。でも実際には9nineというアイドルグループのメンバーだったんですね。ナインなのに5人なのは、最初は9人だったのがメンバーの入れ替えをしているうちに5人になっているけどグループ名はそのまま、なんだそうで、こういう成り行きも好きです。さてこのドラマでは、9nineも海荷ちゃんもそのままの役で出ていて、うっかり解放してしまったキョンシーたちと戦うアイドルということになっています。狙ってゆるいけど本気で面白がって作っている感が伝わってくる。第一巻は3話収録だがゲストにミッキーカーチス、大江麻理子アナウンサー、小金沢昇司などといったところに、いまさらキョンシーという設定と、文字通りの楽屋落ちで、テレ東クオリティ炸裂といったところ。続きも予約済み。 |
『美しいひと』('08 フランス) オットーもヌムール先生も極端だ |
プチニコラの小学校、パリ20区の中学校と来て、いよいよ高校、リセが舞台の映画。これが作られたのには政治的背景もあって、サルコジが学校教育は時代遅れだとして、ラファイエット夫人の『クレーヴの奥方』を教えていることをやり玉にあげたために、文化人や教育界から反発を食らったのだが、その一環として、舞台を現代のリセに置き換えて映画化したのがこれということらしい。もっとも、監督のオノレはパリの若者を描いた作品を好んでいるので、本作もその一つということでもある。私は原作はあらすじしか知らないのだが、若くして結婚した貴族の奥方と、思いを寄せる別の貴族という設定が、転校してきた高校生と、ハンサムで同僚や生徒と浮名を流しまくっているイタリア語の教師となっている。奥方の不義を疑いながらクレーヴ公が病死する設定は、転校生に思いを寄せる真面目な同級生の中庭への飛び降り自殺である。リセの人間模様がどれほどリアリティがあるのかわからないので、いまひとつピンとこないところも多いのだが、肖像画を盗むエピソードが写真になっていたり、手紙から生じる誤解が波紋を広げるエピソードは同じように組み込まれていたりと、手が込んでいることは確かだ。しかしせっかくリセの先生とお会いする機会があったのに、「この『美しいひと』のリセにはどれくらいリアリティがあるのですか?」と尋ねるのを忘れてしまったのが、なんとも残念である。 |
『パリ20区、僕たちのクラス』('08 フランス) 観たことのないリアル「学校」映画 |
プチ・ニコラの小学校の先生もたいへんそうだったけど、現実の今の中学校はもっとたいへんそうだ。カンヌでパルムドールを受賞したのがこの映画、これはすごい。原作の『教室へ』は中学校の国語教師が綴った、教育現場のドキュメンタリーだが、それを映画化するために、実際の中学校で出演希望者を募り、7か月のワークショップを経て選ばれた中学生が生徒役を演じている。教師役は原作者本人である。生徒たちはあくまでも登場人物を演じていて、本人役をやっているわけではないのに、まるでドキュメンタリーのように思えてしまう出来栄えに驚く。様々な人種に民族、移民に不法滞在と、学校や生徒を取り巻く環境は多様で、それにいちいち対応していかなければならないのだから、大変だ。教師たちも時には爆発し、あるいは同僚の妊娠をお祝いしてシャンペンを開ける。職員会議に保護者が出席し、生徒の成績会議に生徒代表も出席するのだから、これはなかなかたいへんだ。その生徒代表の発言からクラスにトラブルが発生し、教師も対応しかねて失言し、火に油を注いでしまう。トラブルは苦い結末を迎え、同情は空しく空回りする。でも、学校というのはこういうところなのだ、というリアリティに、日本の教員も激しく共感するのではないだろうか。結局のところ、文部科学省や教育委員会や政治家やマスメディアが描くような学校はどこにもないのに、そうもいかないからあるふりをしているだけなのだ。しかも、国際化やら心の教育やら何やらがどんどん積み重なってきて、僕たちはもう、うまくいっているふりをすることにどんどん疲れてきているのだ。 |
『プチ・ニコラ』('09 フランス) いつも気になるアルセストのおやつ |
先日、フランスの高校の先生とのシンポジウムに出ることになったのだが、私にとってフランスの学校というと、すぐに思い浮かぶのは「プチ・ニコラ」の小学校だ。原作本はたしか高校くらいの時に読んで、かわいいイラストもあいまって愛読書の一つになったのだが、この映画を見ていて妻に「男子校ということは私立?」と聞かれてはたと詰まった。考えたことがなかった、というか子どもたちはしょっちゅう喧嘩してるし、授業中もお構いなしにおやつを食べているやつがいるし、勉強のできない子はとにかくできないしで、ごくありふれた公立の学校のイメージだったのだが、そう言われてみればそうかもしれない。さてこの映画版、複数のエピソードを組み合わせた構成がどう展開するのか、はらはらしながら見ていたが、最後はうまい落とし方だなーとホッとした。ニコラ役のマキシム・ゴダールは、私が勝手に抱いていたニコラのイメージ---それは原作の絵によるわけだが---とは違うと最初感じたが、これも見ているうちになじんでいった。とにかくかわいいんだけど、原作のニコラよりもちょっと大人びたところがあるかもしれなくて、そこのちょっとした不釣り合いさがまたいいんだな。フランスでヒットしたのも、原作の雰囲気を壊すことなく、実写化と長編化を巧みに果たすことに成功しているからだろう。原作になじんだ人にも、原作を知らない人にも、素直に楽しめると思った。 |