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最近の更新(10年12月〜11年5月)
☆このページは映画などの感想ですので、特に断りなくネタバレあります。悪しからず。☆

『みんな元気』('90 イタリア) こちらがオリジナル

 やはりハリウッドリメイクを先に見たのは失敗だったかな。マルチェロ・マストロヤンニ主演、ジュゼッペ・トルナトーレ監督のオリジナル版は、もちろんアメリカ版にあった、最後に新しい家族が勢ぞろいしてハッピーエンド、なんてことはない。最初からほのめかされてはいるが、やはりそうだったのか、という悲しくせつないラストシーンは、リメイク版では最初に明示的に説明されてしまっている。子どもたちの家庭の事情はさらりと流される程度で、比較すれば明らかにオリジナル版は観る者の想像力に訴える部分が大きい。一方で、イタリア映画らしいファンタジーが面白くて、群集シーンの唐突さにはその都度驚かされるし、繰り返される悪夢のシーンにはその都度震撼させられる。『ニュー・シネマ・パラダイス』翌年の作品とあって、あのトトも長男の子供時代で出演、モリコーネの音楽も美しく、やっぱり泣かされました。

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『エア☆ドラム!』('08 アメリカ) ニール・パートのホンモノが最後に特別出演

 副題が「世界イチせつないロックンローラー」。いやはやこれは、ものすごい映画だった。出演者といいい、脚本といい、演出といい、いかがわしさ最大限。エアドラム対決なんてこと自体が、もうばかばかしい以外の何物でもなく。しかも微妙にプログレファンのココロをくすぐる設定が・・・主人公パワーの憧れがジャーニー、スティクス、そしてラッシュなのだ! 正直、アメリカンorカナディアン・プログレにはほとんど興味がなかったので、最後のエアドラム頂上対決の曲も知らなかったりするのだが・・・すごいなこれは。あこがれのドラマーがニール・パートというのがまたすばらしい。テリー・ボジオでもないしビル・ブラフォードでもないところがマニアックなうえにさらにマニアックではありませんか。
 それでいて、南部のさびれた銅山の労働争議が並行して描かれ、組合の委員長の父親と、エアドラムしか能のない息子パワーとの父子愛、さらに母親にロックフェスに連れて行かれたために聴力を失った娘との出会い、ありとあらゆる移民たち(何せエアシタール!をドロップアウトしたインド人まで出てくるから)やネイティヴたちが絡む。実は社会派?という戸惑いを与えることも忘れない。
 一瞬たりとも目を離すことのできない濃さに圧倒される。もちろん、色白メガネの短パンにいちゃんが飛び跳ねるのを見ていられない人、ストーリーに意味を求める人、などは全く見ていられないだろうけれど、この壮絶なばかばかしさは実にプログレだ!

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『グッドナイト&グッドラック』('95 アメリカ) 観終わるまでジョージ・クルーニーが出演もしていたことに気づかなかった

 マッカーシズム批判のTV番組を作ったジャーナリスト、マローを描いた映画。ジョージ・クルーニーが監督・出演。モノクロで作られていて、当時のテレビ放送の雰囲気を再現しているのだろう。CMなども面白かった。当時は実際にソ連のスパイは彼の予想以上に存在したという話もあったりするようだが、マッカーシーのような人物とそのやり口が実際に国を動かしてしまう怖さもまた、いつでもどこでもつきまとう。映画でも描かれていたが、テレビが次第に娯楽至上主義に転換していく事情もあって、マローたちの使命感はより悲壮なものに映る。主演のデビッド・ストラザーンが知的で説得力のあるマローの語り口を想像させる。

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『ドラッグストア・ガール』('03 日本) ラクロスについての認識が映画の中のおっさんたちと同程度だった自分はやっぱりおっさん

 宮藤官九郎脚本、本木克英監督のコメディ。田中麗奈が主演で、薬学生のラクロス部員。ひょんなことから東京の外れの町のドラッグストアでバイトを始めた彼女に近づこうと、彼女に惚れた中年男たちがラクロスを始めるという、いたってばかばかしい話。そのメンツが柄本明、三宅裕司、伊武雅刀、六平直政、徳井優ときて、このおっさんたちが町の名産品である竹で編まれたクロスを振り回しながら走り回るこっけいさは救い難い。他のわき役にも荒川良々、藤田弓子、根岸季衣、篠井英介、山咲トオル、蛭子能収、余貴美子、杉浦直樹、三田佳子、といった具合。ばかばかしさもこれだけ大真面目にやればすごいことになるという典型の出来になっていて、おおいに楽しんだ。しかし商店会のさえない親父たちの年齢設定が自分に重なるだけに、途中の彼らの痛々しさは身につまされる。三宅裕司の末路など笑えないが、まあそれだけワタシらは悲しくもおかしい、というか、そのおかしさゆえにいまだに何とか生存が許されている、そういう存在なのかなあと納得もしたり。

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『みんな元気』('09 アメリカ) でもここまで子どもたちが育ったらすごいよ

 年齢的に息子としても父としても、両方の立場で悩み多きワタシ。そもそも父子モノには、すでに子どものころに見た『自転車泥棒』以来めっぽう弱いうえに、これは大好きなロードムービーでもあるわけですが、借りてからわかったのはマルチェロ・マストロヤンニ主演、ジュゼッペ・トルナトーレ監督作品の、これはリメイクだということ。ヨーロッパ映画のハイウッドリメイクを観るのはあまり気が進まないのですが、オリジナルがDVDで見つからないのと、主役がロバート・デ・ニーロということで、そこそこ期待して観ました。これが日本未公開というのは残念です。頑張って働いて、4人の子どもを立派に独立させ、悠々自適のお父さん。しかし、妻を失って分かったのは、子どもたちはみなそれぞれ深刻な悩みや問題を抱え、母親には相談していたが、父親の自分は何も知らなかった、という現実。面白いと思うのは、何も知らずにプレッシャーをかけ続けていた父親のことを子どもたちが嫌っているかというとそうではない、というところで、大変なことが起こっていても兄弟姉妹がそこそこなんとか助け合って、父親に心配かけまいとしていたりする。どうにもほどけないほどねじくれてしまった親子関係が取り上げられることが多い中で、案外このくらいの絡まり方が現実的で共感しやすいのかもしれない。もちろん、そういう家族のきずなをつなぎとめていたのは母親なのだから、これは不在の母の物語でもあります。さてオリジナルのビデオをレンタル落ち中古で見つけてしまって、注文してしまいました。このストーリーでトルナトーレでは、きっと泣かされるだろうな。そちらの感想は後日。ところで未公開シーンは必見。というか、ダイナーでの老人との会話シーン、本編では非常にわかりにくくなっていて、未公開シーンを見てようやく会話が成立しています(終わったところのやり取りもとても良いんだなこれが)。

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『ほえる犬は噛まない』('00 韓国) フランダースの犬っぽいところはカラオケ以外どこかにあるのか?

 変な話だった。犬好きからすれば、あの犬たちは本当に大丈夫なのかと、その点だけでまず見ていられないくらいだし、人文系の教員からすれば、主人公が置かれている状況も息が詰まりそうだし、奥さんとのディスコミュニケーションも分からないでもないし、というわけで、なんとも辛い。辛いのだが、それでも観るのを止められないのは、変な人だらけの中で二人の女の子の独特の存在感に引っ張られるからだ。大好きなペ・ドゥナも特段の美女というわけではないし、友達の女の子にいたっては・・・。彼女たちもろくに働かないし、飲んで騒いでどうしようもないのだが、そんな彼女たちがとてもまともに見えるのは、「まとも」とは何か、どんな生き方なのかをあらためて考えさせられるからではないか。

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『かもめ食堂』('05 日本) たしかにおむすびは人に握ってもらった方が美味い

 家族関係の中で周りから取り残された女性は多くいる。そういうひとたちがたまたま、フィンランドで出会う。奇抜な設定のようでいて、あんがいそういう偶然が妙に納得できてしまう。いろいろな心配事や厄介事がひと段落ついて、それでもそこまでの自分の役回りが今一つ腑に落ちていなくて、かといって何をどうするというほどはっきりとした落とし前をつけさせるわけでもない。日常の心配事や厄介事に押しつぶされそうな自分からすると、うらやましいというほどでもないのだが、いつかこんな境地に行くのかもしれないなという、救済というには余りにほのかな光にすぎないのだけれど、そういう気分で見られる。たぶん、そのほのかさのイメージが、北欧の白夜の明るさや、森の静けさや、海の透明さに重なるのだろう。いまだに小林聡美の食パンのCMにこの映画の雰囲気が残っているところを見ても、この映画がそんな人を引き付ける魅力を持っているのだろう。

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『祝祭』('96 韓国) 物語の構造を遥かに超えていく人々の語りが綴られる

 以前NHKの海外ドキュメンタリーで、KBSが作成した『儒教』のシリーズを見て、現代の韓国と儒教との関係に興味を持っていた。この映画は、原作者の作家が実際に出版した児童書が先にあって、それを読んだ監督と作り上げていった作品ということだ。だから、美しく寓話的な絵本の世界と、生々しく複雑な実際の家族関係との対比を際立たせているところがまず面白い。祖母の葬儀に飛び込んできた腹違いの姪と、作家を追いかける女性記者は、田舎に残っていた伝統的な家族、土地の人々の中にあって異分子であり、主人公の作家はその間に立って、淡々と流されるというか浮かんでいるように見えて、緩やかだが外れない要になっている。都会と田舎の軋轢、認知症介護の深刻さ、儒教の伝統にのっとって進められる葬儀の様子が丁寧に描かれている。とはいえ葬儀の場に繰り広げられるいろいろな人間模様もコミカルにはさみこまれ、重いテーマのはずなのに楽しく見てしまうのである。最近見た映画の中では、意外なほど心地よく印象に残る作品であった。

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『南極料理人』('09 日本) どうしても気になるKDDの清水さんとのその後

 今は無人になってしまったらしいドームふじ基地の8人の越冬隊を、海保から派遣された料理人の視点から描いて話題になったエッセイの映画化。ぜんぜん知らない世界の実話は面白い。たぶん、実際の人々は映画以上に個性的だろうし、笑えない話も多いのだろうが、映画的演出も手伝って、一つ一つのエピソードが程よく抑えの効いた明るい笑いに包まれて、楽しめる。

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『キャピタリズム〜マネーは踊る』('09 アメリカ) まあとにかくワタシのローンはどうなるかってことで

 おなじみマイケル・ムーアの突撃ドキュメンタリー。世界同時不況をめぐる連邦政府とウォール街の癒着ぶりを暴く。経済はさっぱりわからないので、見当はずれなことを言っているかもしれないが、起こっていることは日本とあまり変わらないなあと思った。でもそろそろ同じパターンの構成が物足りなく、ラストの暴走も大人しい。敵は資本主義、なんだが、となると、ゴールドマンサックスはじめ金融関係だけではなくありとあらゆる大企業が敵になってしまい、どこに突撃しても中途半端になってしまう。しかしなんだかんだ言ってもマイケル・ムーアやモーガン・スパーロックが堂々と作品を発表するのもまたアメリカなのだよなあ、と思わざるを得ない。

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『寝取られ男のラブバカンス』('08 アメリカ) 最大の悲劇こそ最大の喜劇

 私の大好きな、B級コメディ映画です。下ネタ連発のセンスは好き嫌いが分かれるでしょうが、ジェイソン・シーゲルの見た目のだらしなさには男性的魅力はまったく感じられないので、私が見るぶんにはたいへん親しみが感じられます。クリスティン・ベルもミラ・クニスも途方もなく美人なので、このもっさりした裸体を惜しげなく?曝すジェイソン・シーゲルはうらやましすぎます。ストーリーは人気テレビ女優にふられた音楽家が気晴らしに訪れたハワイでその元彼女と新しい恋人に鉢合わせするという、筋立てはありきたりと言えばありきたりだが、そこに絡む脇役たちのはじけ方と、えげつないようでいて気が利いている台詞回しに、ついつい乗せられて楽しんでしまいます。ところで最後にドラキュラのマペットミュージカルがついに完成するわけですが、これがなんかすごく面白そう。ググってみたらジェイソン・シーゲルはジム・ヘンソンの世界を自ら再現しようとしているらしい。もう一つの顔があるようです。

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『おっぱいバレー』('08 日本) 素朴な学校の素朴な教師で何が悪い

 いまどきこんな融通の利く中学校もなくなっちゃったかなア、いや、まだどこかにあるのかも、というような郷愁をそそられるお話。分かっちゃいるけど同業者としては、綾瀬はるかがかつての恩師を尋ねたくだりにはジンと来てしまう。こっちのほうは、もうこういう教師には生き辛い状況だなあと。バカな中学男子の考えることはまあよく分かってしまうので、綾瀬はるかと大後寿々花に萌えてしまう、往年のバカな中学男子のなれの果ての私でした。

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