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最近の更新(09年08月〜11月)
☆このページは映画などの感想ですので、特に断りなくネタバレあります。悪しからず。☆

『カンゾー先生』('98 日本) お尻は打ったんでしょうか

 麻生久美子出演作の最高傑作、やっと観た。原作の坂口安吾『肝臓先生』とはだいぶちがう。そもそも麻生久美子の役のソノ子が原作にはないし、先生は小舟に乗って治療に向かう途中で機銃掃射にあって命を落とす。和尚とソノ子が出てくるのは『行雲流水』である。小説としてはこの短編2本を合わせ、さらに創作が加わったもので、大作家の原作をアレンジしながら、これだけ完成度の高い物語になっていることに驚嘆する。原作を読むと、安吾と今村監督の両方のすごさがさらにわかる。若手監督の映画を立て続けに見ていた後で、まあもちろんそれらも面白かったわけだが、今村昌平監督・脚本、小松原茂撮影、個性豊かな名優揃いのこの重厚さを堪能してしまうと、しばらくは若づくりの映画が見られない気分になって、すごく得をしたのに損したような。サイトの更新もなかなか手に付かなくなる。麻生久美子もこのソノ子役は素晴らしすぎる。

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『少年メリケンサック』('09 日本) 元ロッカーも現役も、やっぱりあおいちゃんが好き

 やっと借りられました。田口トモロヲが絡むバンドモノはいくつあるんだ、というくらいですが、まあこれは決め撃ちでしょうか。宮藤官九郎監督・脚本で、田口はじめメンバーの怪演は佐藤浩市主演が要となってうまく引き締まり、宮崎あおいがみごとに突き抜けて、とにかく勢いのあるコメディになっている。バンドが決して成功しないところが面白い。パンクですからね。田辺誠一の「アンドロメダおまえ」が妙に耳に残る。

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『アフタースクール』('08 日本) こんな放課後があったらこの仕事もなかなか

 これは拾い物というか、かなり面白かった。最初のシーンから、この人たちはどういう関係なんだろう、という微妙な引っかかりはあるのだが、そのうち話の流れに引き込まれていって、どんでん返しを食らった時は、やられたというほかはない。俳優をそろえているというだけでなく、大物ぞろいでも持ち味がとてもよく引き出されていて、わざとらしさや遠慮は微塵もなく使い切っている。シナリオだけでなく演出も精緻で、完成度を高めている。監督・脚本の内田けんじと大泉洋のコメンタリーを聞きながら、謎解きとして2回目を見れば、いろいろな伏線が分かるのだが、掛け合いとしても爆笑もので、楽しさ百倍というところ。

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『ハイ・フィデリティ』('00 アメリカ) キングクリムゾンがあったぞ

 主人公がカメラに向かって語る演出が必要だったのか、そのねらいがまったく分からない違和感がずっと付きまとうのだが、話そのものはけっこう面白かった。大学を中退して中古レコード店を切り盛りする、音楽好きDJ青年の物語。長続きしていた彼女が出て行ったのをきっかけに、これまで付き合ってきた女性になぜ振られたのかを確かめていくという筋で、キャサリンゼタジョーンズなど美人も出てきたり、友人がジャックブラックだったりといった配役や、レコードの薀蓄もそこそこ楽しめる。やはりジャックブラックのセリフや歌はテンポがよい。主役のうっとうしさを吹き飛ばして目立っている。彼がいないとこの映画はあまり面白くなかったと思う。

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『ラットレース』('01 アメリカ) ひさびさに牝牛も活躍

 ジェリー・ザッカー監督作品。ザッカーものは裸の銃シリーズがあまり面白くないなと思っていたのだが、『フライングハイ』が意外にツボだったので、これはどうかなと試してみたが、今まで見た中では圧倒的に面白かった。まあ言ってしまえば実写版「チキチキマシン猛レース」みたいなものだが、もともとけっこうきわどいジョークが売り、ユダヤ人だからこそできるナチスネタやらすごいし、ルーシーそっくりさん集団とか施設のバスの中でデイジーデイジー♪とかのパロディ、アンテナ宙吊りやヘリで浮気したオトコを襲撃などのアクションと、すべてを詰め込んだギャグの塊だ。ローワンアトキンソン、ウーピーゴールドバーグなどなど、有名どころをそろえた顔ぶれも豪華で、それもカメオ出演ではなくそれぞれの持ち味をよく出している。

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『幸せになるためのイタリア語講座』('00 デンマーク) 落としてしまったパンはやはりデニッシュ?

 これはたいへん面白かった。デンマーク映画というのがどういうものか、まったく予備知識もないのだが、まあ特に舞台がコペンハーゲンだからというところはなく、ヨーロッパのどこかの都市なのだろうな、というだけですっと入っていける。妻を亡くした新任牧師がいちおう主人公なのだろうと思って見ていると、お人よしのホテルのフロントマンや乱暴なレストランのマスター、アル中の母親に悩む美容師、性格異常の父親に苦しめられる不器用なパン店員、などなど、コミュニティのイタリア語講座に通う一人一人が丁寧に描かれている群像劇である。それぞれの事情やつながりから、寒々とした教室に集ううちに、それぞれの事情も移り変わり、ひょんなことから、全員でヴェネツィア旅行をする。一つ一つはありそうな境遇で、しかしこれだけまとまるというのはなさそうな状況で、それでも不幸な境遇がこれだけつながるとむしろ幸せにつながる、という意味では示唆的な内容かもしれない。やっぱり皆、愛すべき人間たちなのである。原題は "Italian for beginners"。このさりげなさがよいのだがなあ。

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『贅沢な骨』('00 日本) ミキサーほど直接的でない入れ物がないか

 麻生久美子出演作めぐりだが、これは暗いなあ。昔の青春ドロドロ映画みたいな内容だが、そこは3人の俳優の巧さと映像の作りこみで、じっくり見せる。それぞれ深いキズを抱えた二人の若い女性に、一人の男性が絡んでくる。麻生久美子はやっぱり?死んでしまう。つぐみはかわいくてどきどきする。とはいえ、金魚をミキサーで飼うシーンは、象徴的というにはあまりにもそのままで、そのそのままさがこの映画の象徴で、ということはやや表現が鼻につくというところもある。こういうストーリーは小説ではワタシはまず投げ出してしまうと思うが、映画だから見られるのは、想像力の欠如かな。

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『アイデン&ティティ』('03 日本) 麻生久美子の上から目線が新鮮

 まだまだ続く麻生久美子作品チェック。これはロックバンドものだ。みうらじゅん原作で田口トモロヲ監督、峯田和伸主演とくれば、かなりコアな代物と予想はつくが、峯田の彼女が麻生久美子、バンドのボーカルが中村獅童、事務所の社長が岸辺シローと、なかなかの配役で、仕上がりは案外と素直な印象である。ロックを貫きたいミュージシャンの葛藤といってしまえばそれだけなのだが、君のしていることはいいと思うよ的な、珍しくしっかりとアイデンティティ確立型の高飛車な女性を演じる麻生久美子と、ブルースハープの演奏に字幕が付く謎のボブディランが、この映画を只者ではなくしている。

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『金星ロケット発進す』('59 ポーランド/東ドイツ) 国際協力と核の脅威はベタですが

 新訳が続いているスタニスワフ・レムの『金星応答なし』の映画化作品。50年前のSF映画で、東欧圏の製作、さらに日本人女優谷洋子も出演という、レム再評価ブーム(なのかな)のさなかに見るにはうってつけだ。で、ストーリーは今思えば単純だし、設定にもかなり無理はあるけれども、レム独特のシニカルな謎解きの展開はよく描かれているし、特撮の技術云々は半世紀前の作品で云々するものでもないが、アート的にはハリウッドSFには決してない独特のものがあって、造形的な硬質さにもかかわらず質感としては湿り気というかやわらかさがあって、これは良くできている。見ておく価値のある一本だと思う。

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『バンブーブレード』('07 日本) この突きは怖いよ

 次男がアニメ好きである。ときどき一緒に見るのだが、今ひとつかみ合わないことがほとんど。しかし、これははまった。次男はずっと剣道をやっている。剣道人口が増えているのか減っているのかわからないが、やはりあの香りのゆえになかなか少女漫画には扱いにくいスポーツなのか、と思っていたら、ついに?この作品の登場である。舞台は高校の剣道部。たちの悪い男子の先輩と、いまひとつやる気のない顧問のせいか、部員も集まらない。新入生の男子二人がやってきたのをきっかけに、その伝で女子部員が増えるのだが、父親が道場をやっているタマちゃんを主人公に、にわかに盛り上がって、という流れである。ちびっこでまじめなタマちゃんはもちろん、けなげな部長や、アルマジロに似ているとも言われるダン君と美少女みやみやのカップルなど、一人一人の性格付けも面白いし、ストーリー展開も飽きさせず、当然ながら剣道もしっかり描かれているので、ついつい全26話を一気に見てしまった。アニメファン向けに、タマちゃんが変身アクションドラマのファンという設定や、伝説のアニメーター(でよいのかな)にまつわる話題などもあって、このあたりは私のようなそれほど詳しくないヒトにはちょっと引くところもあるのだが、ご愛嬌という程度ではある。剣道マンガがないとはもう言わせない、とても楽しい作品だった。

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『eiko[エイコ]』('03 日本) もうこれで大丈夫・・・なのかな

 またまた麻生久美子です。つくづく、痛々しい役がはまる女優さんです。だまされたり死んじゃったり、三日月しずかも報われない役でしたし。それで、この作品では、キャッチセールスに引っかかる、ヤク中の男に貢いでる、会社はつぶれるで、そんなキャラクターがピッタリでした。ちょっとミステリアスな筋書きがなかなかよくできていて、沢田研二の正体がわかると、なるほどぉ、と素朴に感心してしまいました。粗を言い出せばいくらでもあるでしょうが、救いのある展開だし、阿部サダヲがいい人だし、そこそこ話の起伏もあって、楽しめました。

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『サボテン・ブラザース』('86 アメリカ) しょうもない3人のおともだち
『ザ・マジックアワー』('08 日本) 高級すぎてコメディにならない

 この2本、見た時期は違うのだが、なんとなく感想を書きそびれたままほっておいた。で、ふと気付くと、これ、どっちも、よくわけのわからないうちに、映画撮影だと思って引き受けたら、実はマジだったという、似ていると言えば似ている設定だ。『サボテン・ブラザース』は、結局、善良な村人にほだされて、ごろつきどもと一戦を交えてしまう。『ザ・マジックアワー』も、青年ややくざの情婦にほだされてしまうのだ。だから無茶だけど二本立てで感想を書いてしまうことにする。で、見てどうだったかというと、『サボテン・ブラザース』のほうが面白かったのだ。映画としての力の入り方からすれば、たぶん『ザ・マジックアワー』はよくできているのだろう。どこかにありそうでどこにもない、ノスタルジックな街並みと人々をみごとに再現しているし、俳優もそろえている。ただ、見慣れた俳優たちがアナクロなセットの中で動いているというそれだけで、なかなかそこに入り込めないのだ。芝居のDVDを見ているようなもどかしさがあって、たぶんこれは、舞台だったらそこそこ楽しめると思うのだが、映画では作りすぎていてドタバタになりきれていない。超高級ラーメンみたいなカンジだろうか。非現実性でいったら『サボテン・ブラザース』の村なんてどうなっちゃうのというところだが、おそらくは低予算で、ここまで異国の風景でここまでドタバタを繰り広げられると、そんなものどうでもよくなってしまう。ジョン・ランディスの力わざで西部劇パロディも満載。どうもノスタルジーとコメディはなかなか私の頭の中では両立しがたく、エキゾチシズムとコメディは相性がよいようだ。

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