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最近の更新(17年4月〜)


影山輝國 『「論語」と孔子の生涯』(中公選書)  
 『論語』モノ、孔子モノの本は書店に行ってもあふれていて、玉石混交も良いところだが、本書はあまりにも地味な装丁やタイトルのために埋もれがちながら、たいへん面白い一冊なのである。『論語』の古注・新注の紹介からはじまって、これもなるほどと思わせるのだが、影山先生は『論語義疏』の紹介に入り、その面白さをいきいきと伝え始めるのである。『論語』書き出しの「学びて時にこれを習う」の解釈も、別説として学者の一生を述べたものとする解釈を紹介し、三番目の段落を人に教える立場になったところとして、自分の教えを理解しない人がいても怒ってはいけない、という解釈があるのである。なるほど面白いが、ここで影山先生は「私はこの解釈を知ってから、学生に対して決して怒らなくなった。以前はたいへん厳しく指導し、「鬼の影山」と怖がられていたが、いまでは「仏の影山」に変身し、学生に愛される存在になった。これも『論語義疏』のおかげと言えようか。」(p.17)ね、面白いでしょ。こういう、ちょっとした面白い先生本人が顔を出す。もちろん、研究に基づいた知見がちりばめられているのは当然と言うかそれが中心なのだが、軽快な筆致の「コラム」が挟み込まれていたり、構成も読者サービスにあふれている。学術的な内容に、著者の皮肉の効いたいたずら精神が時折顔を出す、類書のない面白さ。オーソドックスな注釈の岩波文庫本などを読み終えたら、次によく『論語』や孔子を知るための一冊として、本書はまことに優れている。2016年に発行。これからの『論語』読みには欠かせない一冊である。

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