PFM Japan Tour 2002.5.11 CLUB CITTA'
 ちゃんと記録をとっているわけではないので、トラックリストもつけられないのですが(いずれどこかで正式発表があるでしょう)、あまりにも久しぶりのライブ、しかもPFMなんで、何か書いておこうと思いまして・・・。ライブレポートとしてはレベル低いんですが、どうか勘弁してください。
 初めて聴いたイタリアのプログレは、"PHOTOS OF GHOSTS" ・・・と言えば、おそらく、同世代のプログレファンなら、過半数の方は頷かれるでしょう。でも、おそらくはこれも多くの方と同様に、PFMをずっと追い続けてきたわけではありません。私の場合、レビューの方でもしつこく愚痴っているように、まずランゼッティのヴォーカルが趣味に合わなかったのと、もちろんパガーニが離れてしまったのと、PFMのおかげではまり込んだイタプログの豊穣に溺れて、他にも面白い音楽がたくさんありすぎて手が(つまり金が)回らなくなったというのもありました。情報も盤もどんどん入手しやすくなって、評判もあまり芳しくないPFMのアルバムには、見向きもしなくなっていました。
 ぽつぽつと落穂ひろいのごとくに、80年代のアルバムを拾って聴いてはいましたが、セレンディピティを聴いて、ちょっとこれは、PFMを侮っていたかもしれないぞ、と思い始めていた矢先、この27年ぶりという来日が実現したのです。それでも腰の重い私ですが、ネットで知り合った方々の盛り上がりやお勧めにつられて、クラブチッタなどというこれまたなかなか縁のない場所に、予約のメールを入れたのでした。
   さて、いよいよ5月11日、川崎クラブチッタ。所持品チェックの列に並び、ドリンク券500円也を買わされて(酒を飲まずソフトドリンクもちょっと・・・という私には、小さなミネラルウォーターに払う金額ではないなあと・・・まあこういうところではこういうものなのでしょう)、パンフレットもおいおい3000円かい、とため息も出そうなものだが、気分はもう期待でワクワク。
 席は前から4列目なのは良いが、なんと上手の一番はじっこ(^^;。目の前に低音用のPAがどかんと・・・。いやー始まったとたんに、体が文字通り震えました。でも音のバランスは案外良くて、ちゃんと聴けました。最近の音響はさすがに良いですね。
 スモークの中を登場したメンバーはもう、皆渋いオヤジばかり。しかも頭が・・・。もともとオヤジくさい印象の濃いムッシーダは、かえってあいかわらずの感じなのですが、びっくりしたのがツルツルのルーチョファブリ。ジヴァスは・・・ジャンレノみたいで、ワタシは実は一番カッコイイと思った。やさしそうなにいちゃん風だったプレモリは神経質な学者のよう。そして・・・ディチョッチョ! ドラマーでヴォーカリストで、プロムナードザパズルではダンサーですらあったとは! この人のパワーはすごすぎる。ステージの進行役であるのみならず、おそらく、バンドの扇の要になっているのがこの人のパーソナリティなのではないかと思わせる。ディチョッチョが走り回っている間のドラムはピエトロ・モンテリージという人で、役柄上控えめに振舞っていたが、演奏はさすがに上手い。
 演奏はしょっぱなから圧倒的なすばらしさ。ぜんぜん衰えていないというようなレベルではなくて、むしろパワーアップしているのだ! 予告されていたトラックリスト(本番では若干の異同があったが)では、セレンディピティからはわずか一曲、パフォーマンスツアー頃のものが若干で、あとは初期作品が多く、始まるまでは不安もあったが、実際に聴いてみると不安は完全に吹き飛ばされてしまった。コンサートは激しく盛り上がったのでした! ロマンチックな曲はあくまでロマンチックなのだが、それでいて、ライブならではの迫力を差し引いても、厚みが増してきている。これが年輪を重ねるということか。もうリヴァーオブライフは、目頭が熱くなってしまいます。セレンディピティからの一曲がガツンと効くが、スオナーレスオナーレからの曲がこんなに良かったっけ???と自問を繰り返すほどに良かったのは、その厚みを引き継ぎつつ、激しくロックンロールしていくから。中途半端なアルバムという印象だったのだが、ライブでここまで練り上げられているとは! 帰ってからあらためてオリジナルやライブを聴き比べてみましたが、それにしても今回の公演ではさらに力強さも重さも増しているようでした。休憩を挟んではじまったプレモーリのピアノソロもなかなか。観客との掛け合いが最高のマエストロデラヴォーチェ、デメトリオストラトスにささげられた曲だったというのも知らなかった。ディチョッチョのデメトリオの唱法再現も明らかに凄みを増していました。そしていよいよフィナーレが近づき、アルタローマからウィリアムテルに流れるあたりではもう最高の盛り上がり。ファブリのバイオリンも全開。アンコールはワールドビケイムザワールドとセレブレイション(リフレインは英語で、途中はイタリア語)でした。いやもう、・・・すごかった。
 あまりにも演奏が充実していて、一つ一つの魅力を伝えるのはかえって難しいほど。ムッシーダのギターはエレクトリックもアコースティックも音の粒立ちが美しい。プレモーリのキーボードプレイも、ローランドのピアノで要所を決めつつ、メロトロンはコルグのトリトンで再現、そしてこれだけは外せないミニムーグのソロプレイと、聴き所はいろいろ。終盤のヴォーカルも地味ながら聴かせる。ジヴァスの五弦ベースは、チョッチョのヴォーカルと掛け合ったり、リコーダーまで吹いてしまう。ファブリはキーボードやギターもサポート。ディチョッチョは・・・、あ、忘れてましたが、ドラムもすごいんですよ(^^;。会場のPAも安定していたので(終盤やや低域がもたって聴きづらくなったのはこっちの耳のせいか・・・)、たっぷりと楽しめました。
 「行って良かった!」と心から言えるライブでした。どうしようかなあとためらっていた私の背中を押してくださったたかりんさんにも感謝。うわさでは来年また来るとか。そのときはぜひ、今回行けなかった方々もご一緒しましょう!