バッティアート・ライブレポート (by 本多宗一郎)
 熱烈なバッティアート・ファン、美大生の本多さんからいただいたメールを、ご本人のご了解がいただけましたので、ご紹介させていただきます。本多さん、なんとライブ見たさにイタリアへ衝動的に行ってしまったという行動派です。ご感想は本多さんに直接メール、あるいはここの掲示板にもどうぞお書き込みください。
 (前略)
 僕はバティアートのことが物凄く、そして心の奥底から大好きで、彼の作品からほとばしる愛情、そして呼びかけに、いつもながら幸せな気分にさせられています。同じようにバティアートを聴いている方がいて、(おそらく、もっともっとたくさんいらっしゃるのでしょう)つい嬉しく、いてもたってもいられない気分になり、こうして慣れないキーボードをたたいているわけです。
 非常に私事なのですが、僕が去年体験した大切なことについて書かせてもらいたいと思います。僕は去年の8月に、イタリアへ行ってまいりました。何をするためかというと、、、バティアートのコンサートを観るために。

 彼のホームページのライヴ情報を見て、コンサートの日取り、そして場所だけをたよりに、えいや、とばかり、衝動イタリア行きを敢行したのです。暇な学生の、あまりに贅沢な行動です。そしていろいろ紆余曲折を経て、なんとかたどり着きました。フィレンツェから電車で一時間くらいの、城壁に囲まれた美しい街、ルッカ。さらにそこから車で少し行ったところの、ど田舎の山のふもとにある宮殿、ヴィラ・マンシ。(宮殿といっても、簡素でかわいらしい感じの、あまり大きくないものです)その宮殿の庭に、簡素なステージは立っていました。野外です。美しかった。感動しました。小躍りしました。涙が出そうになりました。
 お客さんはかなり多く、人気を物語っていました。一等席、二等席、そしてこれらの座席の後ろのフェンスによりかかっている大勢の立ち見席の人たち。そのうしろにはビニールシートを敷いてピクニック調、ウッドストック調に群がっている人たち。ぼくはいろいろあって、運良く手に入れた一等の席。前から10番目くらいでした。

 夜の9時開演。弦楽カルテットとともに、作詞家のマンリオ・スガランブロ登場。チャイコフスキーの弦楽四重奏曲をバックに、詩の朗読をはじめました。(“フリードリッヒ・ニーチェ”などの人名を言っていたのだけはわかりました)そのあと、バンドとバティアートがひっそりと登場。彼が絨毯の敷かれた30cmぐらいの木の台にすわると、おもむろに演奏がはじまりました。デ・アンドレの"La canzone del amore perduto"です。僕の口はあんぐりと広がり、両目から涙があふれました。2曲目は“Ruby Tuesday”。スタジオ版と違い、最後のサビでドラムが入るこのバージョンは、この世でもっとも感動的な音楽のひとつであるように感じられました。
 “Fleurs”からの曲がつづき、4曲終わった頃だったか、バティアートは観客に話しかけました。おそらく立見席の客に、「何で後ろのほうにいるんだ、前に出てきていいよ。」というようなことを言った模様です。座席とステージの間が5mくらい、座席横に2mくらい無駄にスペースがあったのです。「ありがとう、フランコ!」などと叫びながら、若者中心の立見席の人たちが前にダッシュしていきます。僕は一等席だったにもかかわらず、とっさに判断して、前に踊り出し、走り出しました。ステージかぶりつき、一番前の一番前、というような絶好所を獲得しました。人生でもっとも素晴らしい走りの一つだったのではないでしょうか。そしてバティアートの人柄に、あらためて感動させられました。
 曲は“Fleurs”中心のセットがまずあって、そのあと、ひとなごみ、という感じで、スガランブロが、新作で披露した美声で2曲歌いました("ラ・メール”と“ラ・ヴィアン・ローズ”)。
 さてそこから、一気呵成に大ヒットパレード大会がはじまります。最初は座っていた観客たちも、“Voglio vederti danzare”あたりから、続々と立ち上がり、踊りまくり、歌いまくり。みんなしっかり歌詞覚えています。"Gommalacca”からの曲も、テープエフェクトを使って完璧に再現、何しろバンドのノリ、アンサンブルがすさまじい。"Shock in my town”で、エルビスばりにマイクスタンドを持って熱唱するバティアート。ステージを手でたたきながらパンク・コンサートのようにはねまくる僕たち。“Cucurucucu”なんかスタジオよりスピードがかなり速く、もうパンクロック。ただごとではない。“Shakleton”のイントロからいきなり“Il ballo' del potere”に突入!バティアートお客さんと握手しまくり!当然僕も握手しまくり!写真とりまくり!(みんなフラッシュたいてます)
 アンコールは2回。もうやる曲がないから、“La cura”と"Shock in my town”をもう一度演奏しました。

 バティアートはかなりライヴを精力的に行っているらしく、またライヴを観た限り、彼はかなりライヴが好きで、それを大切に思っているんだな、という印象を受けました。若者からお年寄りまでみんなが楽しめる、そんなライヴというのは、希少なのではないかと思います。また、ライヴオンリーの特別なアレンジ、昔の曲の新しい提示のしかた、そういったものを常に考えるひとだけに、ファンにはたまらないものがあります。夢のような一夜でした。僕はおそらく、世界一のしあわせものでした。
 また観にいきます。
 長々と書いてしまいました。駄文失礼いたします。これからちょくちょくページ拝見させていただきます。

P.S.
バティスティ、デ・アンドレの作品も、尋常でないほど好きです。